『橘に鶯』インタビュー#2 大塚由祈子
露と枕『橘に鶯』インタビュー!
第2弾は大塚由祈子さんです。よろしくお願いします!
よろしくお願いします!
今作への第一印象はどのように感じましたか?
また、稽古を重ねる中で今の印象に変化はありますか?
あれは今年の、年始だったかな。たぶん年始頃に出演のお声掛けをいただいて、企画書も読んだはずなんですけど。そのとき、老いて変化していくことの尊さを伝えられる素敵な作品になりそう!とワクワクしたのを覚えてます。
私いま35歳なんですけど、四捨五入すれば40になる年代に気づけば突入してて。鏡で自分と向き合うと肌のくすみや白髪の増加などを感じる最近でして。
でも昔から、俳優の樹木希林さんとか、舞踊家の田中泯さんが持ってる、老いた身体から醸し出す説得力、みたいなものに、すごく魅力を感じてて。その人が人生を通して味わってきた様々な想いが年輪のように身体に刻まれている気がして。ただそこに在るだけなのに、身体のあちこちが語りかけてくる感じがして。歳を重ねていくことでしか出せない深みへの強い憧れがあったんです。なので、そんな私が感じてる「老いていくことの美しさ」を、お客様にも作品を通して感じていただけたら、と思ってました。
実際に稽古が始まって台本を読んで、座組の皆と作品について語っていく中で、もしかしたら「伝統」というしがらみと、どう向き合っていくかという物語なのかもしれないなと。
高校時代、私はダンス部で部長を務めていたのですが、全国大会で優勝経験があるくらいの強豪校だったんですね。で、「独創的な発想・着眼点でダンス作品を創作するのがウチの部の強みだ!」と言われてて、歴代の先輩方の作品を映像で見ても、その強みがあると納得できる作品たちで。
なので部長として、その「伝統」の波に乗っていると言い得るダンス作品を創りたい!と思って、部活動に取り組んでいたんですが、独創的って何だ…?とぐるぐる悩み過ぎて上手くいかなかった時期がありました。
そのときに「伝統」に縛られ過ぎて、そもそも自分自身は何をやりたいのかを見失っていたことに気づいたんです。「伝統」は確かにあるけれど、部員の顔触れは年々変化し続けていて。その年に部に集まった人たちが、自分たちのやりたいことにこだわり続けていった結果、独創的になっていったんだと、先輩たちに相談にのってもらったりコーチに過去の話を聞かせてもらったりする中で、確信しまして。
私の高校のダンス部の「伝統」には、こうすべきというカタチがあるわけではなかったんですよね。部に集まった人たちのやりたいことがぶつかって、その化学反応によって、どのようなオリジナルのカタチに形成していくのか、という伝統のスタイルなんだ!と思えてからは、楽しく部活に取り組めました。
そんな風に高校時代、私が見つけたダンス部の「伝統」の答えとは、また違った「伝統」との向き合い方と、この作品の稽古を重ねていく中で巡り会えそうな気がしている稽古の日々です。
ほかの出演者の方の印象はいかがですか?
実は2回目の共演になる方々が数名いるんですよね。なるしほ(成瀬志帆さん)は、今年の夏にうちの劇団(アマヤドリ)の公演に出演してもらって、ひと夏の苦楽を共にしたので、すごく信頼しています。良い意味で周りの影響を受けずに自分のペースで走ってくれるので、私がテンパったとき、なるしほの近くに行って落ち着こうと思います。なるしほの近くだと、脱力できると言いますか、なんだかホッと一息つきやすいので。
ももりん(小林桃香さん)と、ゆうや(喜田裕也さん)の2人は、去年やみ・あがりシアターの『すずめのなみだだん!』という作品でご一緒したんですが。すごく仲が良い座組で、LINEのグループ通話でオンライン飲みしながら何度も深夜までしょーもない話をたくさんしたので笑、もう家族とか親戚みたいな感覚です。ももりんは彼女にしか出せない味のあるお芝居をするし。ゆうやは清々しいほど思いっきりノビノビ演じるし。2人のお芝居は当時からすごく面白くて好きだったので、今回はどんな化学反応を一緒に生めるのか楽しみです。
あとは皆さん初めましてなんですけど、ももりんと同じく劇団員の村上愛梨さんには、稽古場ですごく助けられてます。思っていることを素直にまっすぐ言葉にしてくれるので、客演サイドの俳優たちも発言しやすい空気を作ってくれているなと。
同じく稽古場のムードメーカーなのが前田隆成くん。稽古序盤から前のめりに座組の皆とコミュニケーションをとってくれて。いつも明るくてパワフルで、だけど繊細な一面も持つ愛おしいけろけろけろっぴだ、ということが最近わかってきました。
しまさん(島田雅之さん)はスーパー気遣いの人なので、大雑把でガサツな私が無意識に何かご無礼を働いたりご迷惑をおかけしたりしちゃわないかしら、と今からドキドキしています。もっと仲良くなって休憩中に足蹴にしてもらえるような関係性になれるよう精進します。そして自炊スキルが凄まじく高いとのウワサなので、この機会に簡単なのを教えてもらおうと思います。
個人的にお客様にご期待いただきたいのが、かいじさん(山口快士さん)と、そねやん(曽根大雅さん)のコンビネーションです。2人が並んで舞台上にいるシーンがあるんですけど、ただ2人が座っているだけなのに、なんかもう可笑しくなっちゃって、私の笑いのツボなおふたりです。2人を並べようと思い立ってくださった、井上瑠菜大先生に感謝しようと思います。
そして私の推し・らこさん(大沼百合子さん)。稽古の最初にみんなでアップとして、毎回何かしらのゲームをやるんですが、らこさんがとにかく苦手な「007ゲーム」というのがありまして。そのゲームでミスしたときのらこさんが凄くチャーミングで可愛くて、もう大好きになってしまいました。
総じて愛おしい共演者の皆さまなので、お客様からも愛していただける役がたくさん現れるのではないかと思っております。乞うご期待です。
大塚さんの演じる詠田という役について、どのような人物だと思いますか?
また、ご自身の役の見どころもあれば教えてください!
まず詠田明日歌(ながたあすか)という名前、美しくて気に入っています。歌を詠む。私の祖母が短歌教室の先生をやっていたのでご縁も感じますし、爽やかな字面でステキですよね。でも当人は泥臭く強かに育ってきたんじゃないかな。
2児の母でありながらもバリバリ仕事をこなす、凄まじいバイタリティの持ち主なので。つまり休日はおうちで読書してそうに見えるのに、実はアウトドア大好きで家族連れてキャンプに繰り出して、何なら早起きして1人で周辺をランニングしちゃうタイプの人だと思います。
あと自分に厳しいからこそ、つい他人にも厳しくなってしまって、怖がられて誤解されてしまうけど、自分の周りの人やモノに対して愛が深い人なんじゃないかなと。つまり家の中は必要最低限のモノだけ置くミニマリスト的なオーラを放っているのに、実はキティちゃんが好きで家にある小物はキティちゃんだらけ、みたいなタイプの人だと思います。
と、こんな感じで詠田さんの私生活への妄想は尽きないのですが笑、化粧品会社・田路屋を守るために何が最善かを考えて揺れ動き、葛藤する姿が見どころです。子を守りながら生きる母という人間の強さも感じていただけるようにできたら素敵だな、と思ってるので頑張ります。
今回の作品のテーマ「変化と伝統」についてどんな印象をお持ちですか?
そもそも私、「伝統」というワードに対して、結構ネガティブな印象を抱いちゃってるんですよね。
大学で教員免許を取ろうとしてたんですけど。生徒指導についての講義で、校則の必要性を説明しなくちゃいけなくて。そんなの戦時中からの学校の伝統のルールが形骸化されているだけで必要性なんて無い!校則の必要性を生徒に伝えるのが先生の仕事なのだとしたら、私は学校教育に携わりたくない!と思って、教員免許を取るのを辞めちゃいました。
そもそも制服だって、いやもちろん、入学式や卒業式みたいな場面での礼服は必要だと思うんですけど、別に学校の生徒全員同じ服装じゃなくたって良いじゃないですか?普段の生活なら尚のこと、好きな服を着る自由は保障されるべきですよね?子どもが個性を表出し得る機会を奪って、一体何がしたいんですか?!
と、こんな感じで、学校教育における「伝統」への不満が大きすぎて、そしてその「変化」を起こしにくいシステムが腹立たしくて。表の校則がそんな体たらくだから、「○○部は購買使用禁止」とか「バスの中で先輩が置くまで後輩は鞄を置けない」みたいな、謎の裏校則みたいなモノも変化せずにずるずる続いちゃってるんじゃないの?!なんて思ったり。ちなみに私が携わっているNPOで、ルールメイキングという校則を見直す取り組みがあるので、ご興味あればググってみてください。
はい、脱線失礼しました。でも「変化と伝統」のポジティブな印象もちゃんとあります。
私が大学時代に所属していたインカレの英語ミュージカルサークルは50年以上の歴史があって、今も続いているんですけど。初期は英語劇で、英語ミュージカルへ挑戦をしたら好評で、今では毎年生演奏で英語ミュージカルを上演してます。
100名以上の学生が集まる代もあれば、全然参加者が集まらなくなって公演の規模を縮小せざるを得なかった代もあって、必然的に変化が求められる環境下で。それでも「English Through Drama 英語で演劇を学ぶ」という理念を大切に、バトンがずっと繋がってきているんです。
毎年の公演の最後に、その年のメンバー全員で大声を出して気合入れをする「チア」を披露するのが恒例なんですが、学生の全力のエネルギーを感じられて、観に行くと必ずそこで泣いちゃうんです。自分が現役だった頃の情熱が今も受け継がれてるのが感じられますし、あの頃の思い出が走馬灯のように巡ります。
価値のあるサークル活動だったと多くの人たちが思ってて、現役の学生たちが伝統を守ってくれると信じてて、OBOGが力強く応援して支えてて成り立っている伝統だなと。なので変化しながらも伝統が続くのは、その伝統を愛する人たちがいるからなのかもしれないと思ってます。
つまり今回の作品のテーマは「変化と伝統=愛」ってことですね。愛が一番。愛しか勝たん。
日常の中で、続けるか迷っているけどなんとなく続けてしまっていることはありますか?
スマホのゲームです。何にハマっているかはその時々で変わるんですけど、街を作ってみたり牧場を経営してみたり、スイカを生み出そうとフルーツを合体させるパズルをしてみたりなど、ですかね。時間の無駄だから続けないで辞めるべきだって何度も思ってるんですけど、最近コレは自分にとって大切なストレス解消になっているのではないかと感じられることもあったりして決心がつきません。
こないだ嫌なことがあったとき、無心にゲームに向かうことで気持ちがクールダウンできたんですよね。でも、ただ一時的に問題から目を逸らしているだけで何も解決しないので。心の平安を保つための逃げ場として必要だよね…!と自分に寄り添う気持ちと、甘えんなゴルァ!問題と向き合う覚悟を持てオリャ!と自分に鞭打つ気持ちとの間で、揺れ動いております。
あとは各種サブスクですね。解約できるモノは正直いくつかあると思うんですが、どれを解約するか考えて解約手続きをする、という行為が面倒臭くて、手をつけられておりません。辞めるって体力がいるんですよね…。頑張って思考停止に陥らず、生きてゆきたいものです。
どんな人にこの作品を観ていただきたいですか?
部活でもサークルでも会社でも、何か組織に所属したことがあって、その組織が好きな人/好きだった人に観ていただきたいです。組織の歴史の短い長いに関わらず。
あ、もしかしたら「家族」も組織の1つに含まれるかもしれませんね。ということで、あらゆる人類の皆さまに観ていただけたら幸いです!
最後に、意気込みをお願いいたします!
劇場の空間で、お客様と一緒に物語の世界へ潜り込んでいく感覚が私はすごく好きなんです。これを体感していただくには、お手数おかけしますが劇場まで足をお運びいただけないと難しいんです。
十人十色、個性豊かな俳優たちが揃いました。共演者の皆と舞台上で巻き起こる化学反応を大切に、詠田明日歌として物語の世界を全身全霊で生きようと思いますので、どうか見届けに来てくださいませ!
「老いてしまった伝統と、これからも老いていく、私たちの物語。」露と枕の新作公演は、「変化と伝統」をテーマに、「継承と深化のための“不変”と“変化”」を描く。
露と枕Vol.9『橘に鶯』
2024年11月13日(水)~17日(日)
王子小劇場(〒114-0002 東京都北区王子1-14-4 地下1階)
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