#つゆまつり2020 その五、『桎梏ブランコ』のはなし

はいはい井上です!!

芥川の蜘蛛の糸みたいな夢見ました。まあ蜘蛛の糸なんか掴めやしないので、ずっとボルダリングしてましたけど。夢の中の私はボルダリングできます。



本日は✂露と枕旗揚げ試演会『桎梏ブランコ』✂の振り返りをやっていきたいと思いま~~~す。

(前回までの振り返りはこちら)

その一、私たちのはなし:露と枕という劇団についてと、劇団員紹介

その二、『煙霞の癖』のはなし:2019年11月の第三回公演、『煙霞の癖』について

その三、『春俟つ枕』のはなし:2019年3・4月の第二回公演、『春俟つ枕』について

その四、『ビリー・ミリガンの毒薬』のはなし:2018年8月の第一回公演、『ビリー・ミリガンの毒薬』について



昨日と引き続き、ざっくり概要をご説明したら、「初級編」「中級編」「上級編」で振り返っていきたいと思います。

  • 初級編🥚は、露と枕を観たことのない、または桎梏ブランコを見逃してしまった方々へ。どんな雰囲気だったか、ご紹介します!
  • 中級編🐥は、桎梏ブランコを観た皆さんへ。印象的な台詞や見どころなど、振り返っていきます。
  • 上級編🐓は、ちょっとコアなお話をします。裏設定とか裏話とか。


ではいきましょう~~!




〇ざっくり振り返り〇

2018年4月19日~23日に大隈講堂裏劇研アトリエにて上演しました、旗揚げ試演会『桎梏ブランコ』。

“しっこくぶらんこ”と読みます。桎梏は手かせ足かせって意味です。



▼舞台設定

短くまとめると、とある共学高校で、過去に事故で死んだ「ユウナ」という少女が、実は自殺なのではないかということを示唆した貼り紙が学校中に貼られたことで、ユウナが所属していた文芸部が原因なのではないかとユウナの友人・タマキと主人公・サクが探っていく、という話です。


詳細はこんな感じ。


舞台は旧校舎図書室の取り壊しが決まったとある高校。
文芸部は取り壊しの反対運動を行っているが、成果は全く出ていない。主人公、佐久間暁人はそんな部活動に辟易しているが、ある時、署名を集めていた看板に、不気味な貼り紙があるのを見つける。そこには、「署名を書いた人の中に“ユウナ”を殺したヤツがいる」と書かれていた。
“ユウナ”というのは、元文芸部員。児童文学の部門で新人賞をとったこともある。彼女は、一年前帰宅途中に事故で死んでいた。
ユウナの友人・タマキが犯人捜しを始めたことによって、文芸部の周りで一年前に起きていたことや、現在も介在している問題が浮き彫りになっていく。
青春の代償に一人の少女を殺した、高校生たちの本性を暴いていくストーリー。


はい。エグい話です。あらすじこちら。

相関図も見ておきましょう。

ちなみに図書委員・イズミ役、私井上瑠菜がやらせていただきました。今は役者やってないので、実質最後の役者でしたね~。




▼テーマ

このお話は、文芸部員と部を取り巻く高校生たちの群像劇、みたいな雰囲気です。

中盤の終わりくらいまで「誰がユウナを殺したんだ?」みたいな話がスタンダードに進みますが、終盤で一気に真実が暴発するストーリー展開が特徴です。


主に語られるのは『恋と青春』です。青春を恋に捧げまくった自分の様々な恋を、そのまま作品にぶつけました。そして劇団員の奥泉と月館森を駆使して疑似恋愛を繰り返すという、ある種の禊を行ったのがこの作品ですね。なので少しだけ私小説的な側面を持ちます。文芸部員は全員私です。


テーマカラーは【茶色】。青春の、泥にまみれた部分だけ抽出したので。舞台美術とか茶っこいですね~




▼旗揚げ試演会とは?

露と枕は早稲田大学演劇研究会(以下、劇研)発の劇団なのですが、劇研内の劇団(=アンサンブル)と認められるためには、“旗揚げ試演会”なる公演を上演しなければなりません。もちろん上演するためにはサークル内で審議が必要ですし、上演後も審議があります。


露と枕が2018年4月29日旗揚げなのは、上演後の審議で劇団として認められたのが29日だったからです。


「この日に旗揚げ!」っていうのがきちんと瞬間で決まってるのって、結構良いなって思います。「旗揚げしたぞ!!」っていう気持ちにもなりましたし、あの時旗揚げしたって思い返せますしね。




〇初級編🥚

さてさて、初級編です。

『桎梏ブランコ』を観ていない方々へ、ストーリーや雰囲気を知ってもらえればと思います。


このお話は序盤はスタンダードだし舞台設定も複雑じゃないので、起承転結で話していきますね。

  1. :「ユウナ」の死の謎
  2. 承その一:「ユウナ」について
  3. 承その二:新たな疑惑
  4. 転その一:解決
  5. 転その二:真実
  6. :その後


ではまいりましょう~~~




▼①起:「ユウナ」の死の謎

まず、文芸部の様子から描かれます。

四月、新歓の時期。文芸部は新校舎の図書室(新図書室)で活動をしています。

文芸部は四人。

部長のナギサ、

副部長のアスカ、

二年のメイと、主人公サクです。

文芸部の現在の主な活動は、“反対運動”。旧校舎の図書室(旧図書室)の取り壊しが決まって、旧図書室にある大量の本が廃棄されてしまうということで、旧図書室取り壊しの反対運動を始めたようです。

サクはそんな部の動きにあまり乗り気でなく、新歓活動の準備をするため、必要な部材を旧図書室へ取りに行きました。




そこにいたのは図書委員の「イズミ」という三年生。彼女はサクに、「あれから一年たつね」「本当に事故だったのかな」「私は誰かのせいで死んだんだと思う」と、意味深なことを言います。

そして、イズミはサクにこう言い残して去っていきます。

「忘れてるから。忘れちゃいけないこと。だから、思い出して。」




それから一週間後、新図書室には、素行の悪い帰宅部の三年生クルスと、その彼女リンが入り浸っていました。

反対運動を手伝わずに遊んでいるばかりの二人を、三年部員は煙たがっています。

しかしサクが来たことで二人は帰ります。どうやらリンは、サクの幼馴染のようで、確執があるようです。




さて、サクは校舎内で反対運動の署名を集めていましたが、トイレに行った隙に、署名を呼び掛ける看板に不気味な貼り紙があるのを発見し、戻ってきました。

「この中に、“ユウナ”を殺したやつがいる」

気味悪がって職員室へ行こうとする面々ですが、そこへ三年生のタマキがやってきます。

彼女は一年前に死んだ文芸部員のユウナの親友であり、事故で死んだユウナが自殺だったのではないかと言います。そして、その原因が文芸部や、クルスにあるのではないかと。

怒って帰っていったナギサとアスカ。取り残されたサクは、タマキに何か知らないかと聞かれ、話したくないと言います。

タマキは意気地のないサクに苛立ち、去っていきます。




サクがその足で旧図書室へ行くと、どうやら貼り紙をしたのはイズミのようでした。

イズミは「ちゃんと思い出してもらわないと意味がない」と言って、サクに発破をかけます。




▼②承その一:「ユウナ」について

一方のタマキは二年生のメイに一年前のことを聞いたりしています。

メイは文芸部のせいじゃないと前置きしたうえで、ユウナが死ぬ前、「最後の絵本」を製作していたと打ち明けます。




また、サクはナギサやアスカに、当時のユウナのことを聞きます。サクはユウナとは知り合いでしたが、文芸部に入ったのが半年前だったので、文芸部にいたユウナのことは知りませんでした。

二人は、ユウナは児童文学の新人賞を取っていたこと、新人賞をとってから人が変わったように、文芸部から遠のいていたことをサクへ打ち明けます。




旧図書室でいちゃつくクルスとリンの元へ行くタマキ。そこでサクもやってきます。

クルスは二人を邪険に扱いますが、もともとユウナの恋人だったようで、死ぬ前日にフラれたようです。

タマキはクルスを問い詰めますが、機嫌を悪くしたクルスは帰ってしまいます。リンはそれを追いかけますが、サクに「何企んでんの?」と問い詰め、去っていきます。




二人になり、サクはタマキへ、「自分の知っている“ユウナ先輩”と、他の人が言っている“ユウナ先輩”が違いすぎるのはなぜか知りたい」と打ち明けます。

タマキはそんなサクを見て、旧図書室で発見したユウナの「最後の絵本」をサクへ渡します。そこでタマキは、ユウナを自殺に追い込んだのが、ナギサ・アスカ・クルスだということを確信したと言いました。




一方でリンは、帰宅途中のメイを待ち伏せ、サクについて聞いてきました。何か知っている様子。



サクはまた旧図書室へ立ち寄り、イズミと話します。

三人が何をしたのか知るべきだ、というイズミ。そして、「絵本は読んでおいた方が良いよ」と助言します。

イズミは立ち去り、追いかけようとすると、部長のナギサが慌てて入ってきました。



「メイが昨日、駅裏のホテル街で男の人と一緒にいたって。噂になってんの。」




▼③承その二:新たな疑惑

新図書室にはメイ以外の文芸部員がそろって、噂について話しています。特にアスカが憤慨しており、「絶対援交してる」と決めつけます。

やってきたメイにも、アスカは罵詈雑言を並べて去って行ってしまいました。

ナギサも気まずそうに、「昔もこういうことあったから気を付けてほしい」と言い残してアスカを追っていってしまいます。



そこへタマキが入ってきて、メイを心配します。

メイは先ほどのナギサの発言が気がかりなようです。自分はOBやOGの人たちと仲が良いから、昔あったなら自分にも話してくれるはずだ、と言います。

自分が知らなくてナギサが知っている、ということは……。三人は「ユウナがメイと同じように援交疑惑を掛けられたのではないか」と思い立ちます。



放課後、新図書室にはアスカがいますが、クルスが来たことで帰ってしまいます。

ナギサはクルスに慰めてもらい、なんだか良い雰囲気。そこへリンがやってきて、「援交なんてやるね、文芸部。二人目でしょ?」と煽ります。

リンは新図書室を後にして、タマキに会います。ユウナが援交をしていたことをクルスから聞いたと言い、「佐久間(サク)には関わらない方が良い」と忠告して、帰っていってしまいました。

サクとタマキは情報を共有し、新図書室へ向かいます。




新図書室にはナギサがいました。ユウナの援交疑惑について、ナギサを問い詰めるタマキ。

ナギサはそのことを認めたうえで、ユウナは援交をして新人賞を獲得したことを明かします。そして、ホテル街でユウナの姿を見たのは、母親の荷物をホテル街まで届けさせられていたアスカだということも。

タマキはユウナがそんなことをするはずがないと掴みかかりますが、「ユウナを裏切ったタマキには分からない」とナギサは出て行ってしまいます。



タマキとナギサとユウナは、幼馴染でした。昔から自分の性別に悩んでいたタマキは、ユウナのことが好きで、高校一年生の時――二年前に告白をしたそうです。断られたのもショックでしたが、ナギサに「気持ち悪い」と言われたことをきっかけに学校へ行けなくなり、ずっと不登校だったようでした。

タマキはサクへ、「お前も好きだったんじゃないの?」と言って帰っていきました。

一人残されたサクはつぶやきます。


「違う。そんなものじゃ、なかった。」




▼④転その一:解決

次の日、サクが旧図書室へ行くと、メイが紙袋を見て固まっています。

様子がおかしいことに気付いたサクが、メイの紙袋を見ると、使用済みナプキンが入れられていました。

「死にたい」というメイに、「俺が話してくる」とサクは旧図書室を後にします。

入れ替わりでクルスがやってきて、メイに話しかけます。「何か、似てんな。あいつに。」




新図書室にはナギサとアスカがいました。

サクは彼女たちを見つけると、メイの紙袋を突き付けます。動揺するナギサと、固まっているアスカ。サクは、アスカにあなたがやったのかと問い詰めます。




旧校舎へ偶然やってきたタマキは、メイとクルスから事情を聞きます。

親身にメイの話を聞き、もう部活はやめてしまった方が良いと勧めるクルスに、タマキはユウナの時もそう言ったのか聞きます。

クルスはユウナの時は信じてやらなかった、と言います。距離を置いて、死ぬ前日に別れてほしいと言われた。死んだ日にもう一度会いたいと言われたが無視した。信じていれば、と。

タマキはその足で、新図書室へ向かいます。




合流したタマキは、アスカを責めました。アスカは、メイが援交をしているかもしれないのにもかかわらず、男=サクに味方してもらっているところを、自分の奔放な母親に重ね合わせてしまったようです。タマキはそんなアスカへ、メイもユウナもお前の母親じゃない、と説きます。

ナギサが言うことには、ユウナに「部活に来ないでほしい」と言ったのはナギサで、本当に部活に来なくなってからは、まったく話していなかったようでした。

アスカも、関わりはなかったと言います。いじめも嫌がらせも、何もしていないと。

しかし、違うかもしれないと思っても関わらなかった。そのことに罪悪感があって、彼女たちは旧図書室取り壊しの反対運動を始めたと言いました。旧図書室は、ユウナが好きだった場所だから。




一件落着して、タマキとサクは、ユウナは結局事故であったと結論付けます。クルスに会いに行ったとき、交通事故にあってしまった、と。

ただ、謎は残っています。最後の絵本とは何だったのか。ユウナはクルスと別れて、何がしたかったのか。

サクはそこで初めて、絵本を読みます。ユウナとの思い出がフラッシュバックします。


「結末に困ってるんだけど、どうすればいいと思う?」




サクは、ユウナが死んだのは自分のせいだった、と知ります。

すべてを知るイズミは、そのことをサクへ話します。「自分の人生を絵本に書いて、結末をあなたに託した。あなたが『主人公が死ぬ結末』を選んだから、ユウナは死んだ」、と。

それ自体が罪なのか苦悩するサクを、イズミは激しく責めたてます。ユウナは止めても死ぬことを選んだ、ユウナの苦しみを「知らなかった」から、殺した、と。

サクは自分が殺した、とどこか安心した様子で、イズミは「良かったね。思い出せて。」と不気味に微笑みます。

「でも、無理だよ。」


「嘘はバレるから、嘘なんだから。」




タマキが飛び込んできてサクを呼び、叫びます。

「あの子、……メイ、退学になったって。」




▼⑤転その二:真実

(ここから全部ひっくり返るので心の準備を済ませて下さ~~い)


新図書室。アスカが焦った様子でクルスに詰め寄っています。

そこへナギサがやってきて、メイが最後の挨拶に来ると言います。

サクとタマキも合流します。ナギサの話を聞き、メイが援助交際の現場を抑えられたこと、そして本人も認めていることも聞きます。

サクはそれでも信じず、必死にメイの無実を主張しています。さすがのタマキも信じませんが、サクは諦めません。




その場の全員がサクの話を信じず解散しそうになったとき、メイがやってきます。

メイはクルスに、返しますありがとうございましたと、札束とコンドームを投げつけました。

援助交際はクルスの差し金だったということを、相手の男性が警察に言ってしまったと言います。メイに掴みかかるクルス。口論の末、メイが言います。


「先輩ばっかり逃げて。ユウナ先輩だって死んだのに。」



クルスは、ユウナにも援助交際をやらせていた、というのです。使い捨てて自殺させた、と。タマキが激昂しますが、クルスは「あいつは俺のために健気に黙っててくれた」と開き直り、ナギサやアスカの罪についても言及します。

ナギサは、ユウナが援助交際をしていたことをクルスに告げ、自分と付き合ってほしいと言ってきたこと。

アスカは、自分も援助交際をしていて、バレないように潔癖ぶっていること。

全員同罪だ、全員でユウナを殺したというクルスに、メイが反論します。

「でも罰せられるのは先輩ですよ。」


「ざまあみろ。」




全員が憔悴しきっている中、サクの様子がおかしくなっていきます。自分はこんなこと知らない、望んでない、と、飛び出していってしまいます。



旧図書室に逃げ込んだサクへ、イズミが近づきます。依然、「あなたも傷つけたことに変わりはない」と責めるイズミ。しかしサクは、「それじゃあ意味がない。自分の理由は小さすぎる」と意味の分からないことを捲し立てます。

そして、イズミの顔を見た時、サクは何かを思い立ったように、呟きました。

「今、この場で、証明すればいいですか?」

サクはイズミの首を絞め始めます。




新校舎には、慌てた様子でリンが入ってきます。サクがいないか、その場にいるタマキに尋ねます。

ショックだったんだろうというタマキですが、リンは言います。

「あいつは、全部知ってた。白水結菜(イズミ・ユウナ)から、全部聞いてたよ。」


リンは続けて、彼は人が傷ついたり泣いたりしている姿しか愛せない気質を持っていること、それでもずっと優しく白水結菜の話を聞き続けていたこと、だからこそ彼は、自分が白水結菜を殺したことにしたかったことを話します。

「ユウナ」の死が彼の中で過激な倒錯を起こしてしまったことを打ち明けたリンに、タマキはサクを探しに行こうと言います。




一方旧図書室では、サクからイズミへの拷問が始まっていました。

ハサミでイズミの太ももを何度も何度も刺し続け、泣き叫ぶ姿に恍惚とした表情を浮かべながらも、段々と動かなくなっていくイズミの前で、悲しそうに、苦しそうに縮こまっていきます。

そこへリンがやってきます。「自分がイズミさんを殺したんだ」と言うサクに、リンは病院へ行こうと言います。イズミを先に、と呆けているサクへ、リンは言います。

「ここにはあんた一人しかいないでしょう?」




そこでサクは、自らの太ももに激痛を感じます。今までのイズミは、彼が作り出した幻想だったのです。

幻想のイズミは、いつしか死の前日の「ユウナ」になり、サクへ話しかけます。その言葉はどれも優しく、希望に満ち溢れたものでした。自分の前から消えていくユウナを追いかけようにも、足を負傷したサクは追いかけることが出来ません。

サクは何度も自分が傷つけたのだと暗示し、また自傷を始めようとするも、リンに抱き止められてしまいます。ハサミを突き付けた手は、リンを貫くことは出来ませんでした。

「俺が、傷つけたかったのに。」

幻想の「ユウナ」は、死の間際も、幸せそうな笑顔を浮かべていたのでした。




▼⑥結:その後

それからしばらくして、取り壊しを明日に迎えた旧図書室で、タマキとリンが話します。

タマキは、ユウナが絵本もやめてクルスとも別れてやり直そうとしていたこと、死んだ日の次の日、サクへ絵本を読ませる約束をしていたことを、サクから聞いたと言いました。

一人になったタマキは、絵本の一番最初のページを開き、物語は幕を下ろします。




やばい。長いですね!ごめんなさい。盛り上がっちゃいました。




〇中級編🐥

中級編は観たことのある方へ。見どころや台詞を振り返っていきましょう。



▼「ユウナ」の最後

そんなこんなで欲望に任せて、全然登場しないヒロインを演じた私井上ですが、断末魔とかマジで難しかったし、最後のシーンとかとても難しかったです。

切ないシーンはこんな感じです。

***

結菜  アキちゃん。
暁人  ……
結菜  ごめんね。
暁人  ……何が?
結菜  来るたび愚痴ばっかり、聞いてもらっちゃって。

暁人  ……あ……

結菜がブランコを離れる。追い付けない。

結菜  ……全部知って……ショックだけど、そんなことも言ってらんないし。

暁人  ……違う。

結菜  やっぱり、全部正直に打ち明ける。学校も絵本もやめて、慶くんとももう一回、ちゃんと話そうって、思ってる。

暁人  違う。

結菜  ちゃんとしようって。……本当に。

暁人  違う、やめて……やめて下さい。

結菜  たぶん、一人じゃ、決められなかった。

暁人  いやだ、

結菜  アキちゃんがいなかったら、死んでたかもしれない。

暁人  違う、いやだ、やめて……

結菜  ありがとう。本当に。

暁人  行かないで……、イズミさん。

結菜が立ち止まり、ようやく振り返る。

結菜  ……名前でいいよ。

暁人  ……。

結菜  名前で呼んでよ。

暁人  ……。

結菜  まあ、いいや。また明日。

***

アキちゃんはずっと同じこと言ってますね。違うとか嫌だとか。ボキャ貧ですけど、もう少し掛け合い減らしても良かったのかもなんて思ってます。




▼大正義幼馴染リンちゃん

ギャルで軽いノリなのにサクの前だけぶっきらぼうで、最初から全部知ってていろんな人に釘刺しに回るも効果なく、最後はサクを助けに奔走する幼馴染、リンちゃん。

色んな伏線をまいてくれる重要キャラでした。

***

凛   お前何企んでんの?
暁人  え……何のこと?
凛   しらばっくれてんじゃねえよ。何なの、これ。
暁人  ……。
凛   今更何しても変わんないからね。何も。
暁人  俺は、……知らなくちゃいけないんだよ、ユウナ先輩のこと。坂城さんには関係な……
凛   白々しいんだよ。その呼び方も。
暁人  は?
凛   ……気持ち悪いんだよ。お前。全部。

***

「坂城さん」が白々しいと思いきや、「ユウナ先輩」が白々しいんですよね。これ、結構お気に入りのフェイントです。

あと、ここのリン役澤あやみとサク役月館森の演技がとっても泣けます。

凛   病院行くから。
暁人  は、……?
凛   行くんだよ。
暁人  イズミさんは、?
凛   はぁ?
暁人  先に、イズミさんを、
凛   こんな時に馬鹿なこと言わないで。
暁人  でも、
凛   死んだでしょ。とっくの昔に。

暁人  ……

凛   白水結菜は、1年前に死んだの。

暁人  ……でも、今、ここにいるのは、

凛   ここにはあんた一人しかいないでしょ?

暁人  ……は……?

***





▼みんなのヒーロー、タマキ

タマキかっこよくなかったですか? 「てめえのその被害者面がムカつくからだよ」とか言ってるし、何か、良いですよね。タマキ。

 私一番好きなシーンココですね、やっぱり。

***

***

環   幼馴染みだったんだけどさ。
暁人  え。
環   私と、ユウナと、ナギサ。
暁人  ……。
環   私はずっと、二人とは違うって思いながら生きてきた。
暁人  違う、?
環   人形とか、ワンピースとか、そういうの、わかんなかった。どうしても。良さっていうか……うん。二人は、好きだったのに。
暁人  ……。
環   そういう私を、変だって言うナギサが嫌いで、かっこいいって言うユウナが、好きだった。
暁人  え、
環   好きだったんだ。ユウナのこと。

***




▼地獄編

 ナギサ・アスカ・メイ・クルスも語りたいんですけど、本当にあり得ないくらい長くなりそうなので、地獄を少しだけお見せして終わりたいと思います!

***

来栖  いきなり全部打ち明けて援交やめたいって、別れたいって言ってきたからさ。全部教えてやったよ。
環   ……じゃあ、今の、全部……。
来栖  俺だけじゃないから。殺したのは、お前らも一緒だよ。正義面して裏切って、結果殺した。
環   ふざけんなよ、お前、
来栖  お前ら全員、人殺しだよ。あいつは、お前らのせいで、

芽生  でも罰せられるのは、先輩ですよ。

来栖  ……。

芽生  人殺しで、女の子に援交させて。人生壊れるのは、先輩ですよ。

来栖  ……。

芽生  お前も苦しめ。ざまあみろ。

***

 クルスケがずーーーっとユウナの名前呼ばないの推しポイントでしたね。何か今でも、クルスケは好きです。何か。


 以上、中級編でした~~~~~🐣🐣🐣




〇上級編🐓

ここからはちょっと細かいお話。裏話、裏設定など話していきます。



▼あてがき始めました

 このお話は「あてがきに挑戦してみよう」ということで、エチュード(即興劇)で各々の恋愛観みたいなものを再現してもらいつつ、作劇にあたりました。

 告白する/されるであったりとか、別れを切り出す/切り出されるであったりとか、いちゃつくだったりとか、普段どういう恋愛をしているのか、どんな性格でどんな表情で恋をするのかみたいなところは、完全に参考にしました。


 ただ、振り返りでも書いたんですけど、文芸部員は全員私が素地で、私が私の中で認めたくない悪の部分をそれぞれの登場人物に擦り付けていたので、皆はああいう人じゃありません。私もちょっと違うんですけど。こういう人物造形のやり方があるんだなあって、学んだ公演でもありました。




▼やっちゃいました。五七五

 初級編にも書いたんですけど、あの事件の発端の貼り紙をね、「この中に、ユウナを殺したやつがいる」っていう、五七五にしてしまったんです。

 当初気付かなくて、私。ある時稽古で、それを読み上げるナギサ役の川久保晴が、「この中に/ユウナを殺した/やつがいる」って区切って読んじゃって。「五七五やん?!」ってなってその後そのシーンが全然稽古できなくて。ってことがありましたね。うん。


 あと本当に真面目に芝居してたのに本当に申し訳ないんですけど、この月館森おもしろくないですか?




▼今読み返して思うこと

最後です。読み返してみて思ったこと、綴って終わろうと思います。


いやあ、私この話、露と枕の中で多分一番好きです。普通に今読んでも面白いし。

伏線も割とちゃんとはってるし、過去の話が軸ですけど現在もきちんとドラマが動くし。どんでん返しもきれいなんじゃないかなと思います。

登場人物一人ひとりに割とスポットがあったってるのも、良いなあと思います。気を抜くと、情報出してくれる人みたいなの出すことあるので。



ただ、やっぱり佐久間暁人は賛否両論ありましたね。ビビり倒す人、多かったように思います。

あまりにも共感性が低い主人公だったので、怯えて帰る人が続出したとかしないとか……。

今思うと、何か、援交ビジネスだけで衝撃としては十分だったのに、人畜無害そうだけど闇深そうな主人公がその衝撃の上を行ったもんだから、感情の処理が追い付かないな、と思います。これはついていけなくなるような気がします。「詰め込みすぎ」ってやつですね。

あえて容易な言葉を使うんですけど、援交とサイコパスの必然的な関係性がないっていうのが一つ、ついていけないポイントかなって。あと援交ビジネスで基本的な謎が解決しちゃうのももったいないな、とか。当時では出てこなかった反省点が二年も経つと出てくるようになるんですねえ……。



でもなんか、いつかちゃんとリメイクしたいですね。本当に見せたかった「佐久間暁人の悲しさ」みたいなものを、お客さん全員に持ち帰っていただけるようにしたいです。







以上です! 本日もお疲れ様でした。過去最高に長いですよ。お疲れ様でした。


桎梏ブランコは、やっぱり次回公演の物販でも台本販売いたしますので、是非!



明日は過去作品振り返り最終回! 幻の(笑)旗揚げ試演会、💄露と枕Vol.0「白に色づく」💄を振り返ります~~!!

しーゆーあげいん!

0コメント

  • 1000 / 1000

露と枕